近年、働き方改革が叫ばれていますが、それでもブラック企業は多数存在します。
法で定められた範囲をはるかに超えた残業時間、しかも残業代は払われない、休日が取れない、有給休暇を取得できない、モラハラ・パワハラの横行など…。
こうした職場で勤め続けていると、心身ともに蝕まれてしまうため、早めに退職を考えるのが賢明です。
今回はブラック企業を辞めたい人のために、あらゆる場合を想定した辞め方を考えていきたいと思います。
Contents
辞める意思を伝える前に。あらかじめ準備しておきたいこと
いくらブラック企業といえども、できれば事を荒立てず、穏便に退職したいですよね。スムーズに退職にこぎつけるためには、あらかじめ準備を整えておくことが大切です。以下に必要な準備をご紹介しましょう。
在職中から、ある程度転職先のめどはつけておく
自己都合による退職は、3ヶ月後からしか失業保険が支給されません。貯蓄がたくさんある人はいいですが、3ヶ月も遊んでいては生活ができなくなる、という人もいるでしょう。
退職後の見通しを立てるためにも、在職中から転職先を探しておくのが賢明です。仕事が忙しい人なら、企業選びや面接などをセッティングしてくれる、転職エージェントを利用するのもいいでしょう。
会社側に伝える、建前の退職理由を考えておく
退職の意思を伝えると、必ずその理由を尋ねられます。その時、会社への不満を述べるのはNG。労働条件の改善を提案され、引き止められかねないからです。
ただし、介護する家族もいないのに介護を理由にするなど、あまりに明白な嘘はどこかでボロが出る可能性もありますので、注意してください。
有休休暇の残りの日数を確認しておく
ブラック企業の場合、有給休暇がたくさん残っていても、それを社員に知らせず、休暇を消化させないまま退職させる例も少なくありません。
後任の人のために、引き継ぎの資料を準備しておく
退職するに当たって、仕事に穴が空かないようきちんと引き継ぎをするのは、社会人としての常識です。
しかし、心身共に限界で急を要する場合や、会社が退職を認めてくれず強行突破する場合などは、退職の意思だけ会社に伝え、その後は出社しないまま有休消化するというケースも考えられます。
パワハラや未払いの残業代などの証拠を集めておく
できれば円満退職が理想ですが、中にはパワハラやモラハラを受けて、退職後に会社を訴えたいという人や、未払いの残業代を請求したいという人もいるでしょう。
その場合、退職後は証拠を集めることができないため、在職中に集めておかなければなりません。
パワハラやモラハラの証拠としては、会話を録音した音源や、メールなど相手が書いた文面が有効です。
退職の意思が固まったら、1ケ月以上前に会社に伝える
会社を辞める場合、引き継ぎの期間も考えて、1ケ月以上前に退職の意向を上司に伝えるのが一般的です。たとえブラック企業であっても、まずは通常の段階を踏んで退職の手続きをするようにしましょう。
上司の了承が得られれば、退職願の提出、退職日の決定、引き継ぎの準備や有給休暇の取得など、具体的な段取りに進んでいきます。
そんな場合の対処法は、次の項を参考にしてください。
退職が認められない場合は、内容証明で退職届を送付
円滑に引き継ぎを行い、穏便に退社するのが理想ですが、悪質な引き止めに遭った場合は、そうも言っていられません。
労働基準法では、2週間前に退職の意向を伝えれば、会社側も認めなければいけないと定められています。
会社との関係が悪化してもいいからすぐにでも辞めたいのなら、2週間前に退職届(この場合は退職願ではなく、退職届)を企業側に送り、残りの日数は有給休暇を取得すれば、職場の人と顔を合わせずに退職することができます。
「退職届」の退職理由は、「一身上の都合」でOK
退職届を書く時、もし企業でテンプレートが用意されている場合はそれを使っても構いません。テンプレートを使わない場合は、以下のように書きます。
私事、
一身上の都合により、来る平成○年○月○日をもって退職いたします。
平成○年○月○日
○○部○○課 山田花子 印
株式会社○○
代表取締役社長
山田太郎殿
縦書きの場合は、2行目の「私事、」は行の一番下に書くようにしてください。理由は自己都合の場合、どんな理由であれ「一身上の都合」としてください。
「退職願」の場合は、3行目が「一身上の都合により、来る平成○年○月○日をもって退職いたしたく、ここにお願い申し上げます」としてください。後は同じになります。
ブラック企業にありがちな、引き止め工作とは?
悪質なブラック企業は、悪い労働条件で働かせ続けたいため、あの手この手で引き止めようとします。ありがちなのは、以下のような方法です。
- 「お前なんかうちを辞めたら、どこも雇ってくれない」と無能呼ばわりする。
- 「こんなすぐに辞めるなんて、根性がない」となじる。
- 「仕事が回らなくなってもいいのか。無責任だ」と責任転嫁する。
- 「仕事に穴が空いたら、後で損害賠償を請求する」と脅す。
- 「労働条件を改善する」と言うが、いっこうに改善しない。
ブラックな勤務体制で心身ともに疲弊していると、つい会社の言いなりになってしまいがちですが、将来のためにも、毅然とした態度で会社と決別することが大切です。
退職の際は、「離職票」を必ずもらうようにしよう
会社を辞めると、健康保険の切り替え手続きや、失業保険の受給手続きのために、「離職票」が必要になります。
「離職票」は、退職日から10日以内に発行しなければならないと、法律で定められています。しかし、ブラック企業の場合は、こちらが黙っていると発行しないところも結構あるようです。
退職の際は、必ず離職票を発行してもらうよう、念を押しておきましょう。会社に受け取りに行けない場合は、郵送で送ってもらうようにするとよいでしょう。
ブラック企業を辞めたい人に!力になってくれる相談窓口
ブラック企業を辞めたいが、一人だと言いくるめられてしまい、なかなか辞められない…。そんな場合は、外部の窓口に相談したり、助けを求めることをおすすめします。
労働関係で力になってくれる相談窓口を、以下にご紹介しましょう。
- 総合労働相談コーナー
- 無料で相談できる労働局の労働相談窓口で、匿名での利用も可能。労働関係全般の相談に乗り、必要に応じて専門的な機関も紹介してくれます。
- 労働基準監督署
- 労働基準法違反の取り締まりを行う部署です。残業代の不払いなどがある場合、違反申告すれば行政指導を行ってくれます。
- 連合(日本労働組合総連合会)
- 日本最大の労働組合。ブラック企業やセクハラ・パワハラなど、労働問題全般の相談に乗ります。電話だけでなく、メールでの相談もできます。
- 法テラス
- 国が設立した法的トラブル解決の総合案内所。労働相談にも応じており、必要に応じて問題解決のための法制度や手続き、適切な相談窓口を無料で紹介してくれます。
- 日本労働弁護団
- 全国の弁護士によって組織された団体で、労働相談や訴訟活動に対する支援を行っています。
ブラック企業かな?と感じたら、勇気を出して辞める決断を!
いかがでしたか?ブラック企業は辛く苦しい思いをしなければ一人前になれない、寝る間も惜しんで働くことがやる気の現れなど、前時代的な根性論を盾にすることも少なくありません。
確かに努力や向上心は大切ですし、仕事では楽しい経験ばかりでなく、叱られたり辛い思いをすることもあるでしょう。
責任感が強く真面目な人ほど、ブラック企業に付け込まれてしまいがち。もし職場がブラックだと感じた場合は、病んでしまう前に逃げ出すことも大切です。
もし自分一人で解決できないのなら、家族や第三者など、会社の人以外の誰かに相談することをおすすめします。一人で抱え込むのではなく、時には周りの力を借りながら、心身ともに健康な状態で働けるようにしてくださいね。