パートをする際、扶養内で働くために「103万円の壁」や、「130万円の壁(または106万円の壁)」を気にする方も多いでしょう。
103万円を超えてかかる税金が所得税、130万円(※人によっては106万円)を超えてかかる税金が社会保険ですが、住民税がかかるのは年収がいくらからでしょうか。
住民税の場合、住む地域によって差があり、おおよそ年収93万円、97万円または100万円を超えるとかかってきます。住民税の非課税を外れて働く場合、一体どのくらいかかるのか、事例で計算のしかたを説明します。
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パートする際に気を付けたい住民税の壁とは?
住民税の壁とは、住民税の支払いが生じる年収のラインのことです。このライン内の年収の場合、妻自身の住民税は免除されます。
住民税の壁は住む場所によって変わる
住民税の場合、住む地域によって金額が異なり、おおよそ年収93万円、97万円、または100万円を超えると課税されます。
住民税には
- 所得に関係なく全員課される均等割、
- 所得によって金額が変わる所得割
と呼ばれる2つがあり、この合計から成っています。
例えば東京23区の場合、年収100万円を超えなければ所得割も均等割もかかりませんが、群馬県前橋市の場合、年収96.5万円~100万円までは均等割のみ課税されます。
パートの住民税、計算方法は?いくらかかる?
では住民税の壁を超えて働く場合、どのくらい税金がかかるでしょうか。世帯で考えると妻の年収がいくらかにより、夫の住民税にも影響が出ます。
また、扶養控除の対象となる家族がいる場合はさらに住民税も変わってきますので、モデル例を使って説明します。なお事例は全て東京23区をモデルにしています。
夫(会社員)・妻(パート、年収102万円)の場合
- 夫(30代)給与360万円、社会保険料36万円
- 妻(30代)給与100万円
夫の住民税:132,000円/年(以下は計算式)
妻の住民税:均等割のみ5,000円/年
夫+妻の住民税:13万7千円
(夫の住民税計算式)
- 給与所得=360万円(年収)-126万円(給与所得控除)=234万円
- 所得控除額=社会保険料36万円+配偶者控除33万円-基礎控除33万円=102万円
- 課税標準額=給与所得-所得控除額=234万円-102万円=132万円
- 所得割=132万円×10%=13.2万円
- 均等割=5千円
- 調整控除後の所得割=13.2万円-5千円=12.7万円
- 住民税=調整控除後の所得割+均等割=12.7万円+5千円=13.2万円
夫(会社員)・妻(パート、年収120万円)の場合
- 夫(30代)給与360万円、社会保険料36万円
- 妻(30代)給与120万円
夫の住民税:146,500円/年(以下は計算式)
妻の住民税:89,500円/年(以下は計算式)
夫+妻の住民税:23万6千円
(夫の住民税計算式)
- 給与所得=360万円(年収)-126万円(給与所得控除)=234万円
- 所得控除額=社会保険料36万円+配偶者特別控除21万円+基礎控除33万円=90万円
- 課税標準額=給与所得-所得控除額=234万円-90万円=144万円
- 所得割=144万円×10%=14.4万円
- 均等割=5千円
- 調整控除後の所得割=14.4万円-2.5千円=14.15万円
- 住民税=調整控除後の所得割+均等割=12.7万円+5千円=14.65万円
(妻の住民税計算式)
- 給与所得=120万円(年収)
- 所得控除額=基礎控除33万円
- 課税標準額=給与所得-所得控除額=120万円-33万円=87万円
- 所得割=87万円×10%=8.7万円
- 均等割=5千円
- 調整控除後の所得割=8.7万円-2.5千円=8.45万円
- 住民税=調整控除後の所得割+均等割=8.45万円+5千円=8.95万円
夫(会社員)・妻(パート、年収102万円)・子(17歳)の場合
- 夫(40代)給与460万円、社会保険料46万円
- 妻(40代)給与100万円
- 子(17歳)夫の扶養
夫の住民税:99,000円/年(以下は計算式)
妻の住民税:均等割のみ5,000円/年
夫+妻の住民税:10万4千円
(夫の住民税計算式)
- 給与所得=460万円(年収)-146万円(給与所得控除)=314万円
- 所得控除額=社会保険料46万円+配偶者控除33万円+扶養控除33万円+基礎控除33万円=145万円
- 課税標準額=給与所得-所得控除額=314万円-145万円=169万円
- 所得割=169万円×10%=16.9万円
- 均等割=5千円
- 調整控除後の所得割=16.9万円-7.5千円=9.4万円
- 住民税=調整控除後の所得割+均等割=9.4万円+5千円=9.9万円
夫(会社員)・妻(パート、年収120万円)・子(17歳)の場合
- 夫(40代)給与460万円、社会保険料46万円
- 妻(40代)給与120万円
- 子(17歳)夫の扶養
夫の住民税:178,500円/年(以下は計算式)
妻の住民税:89,500円/年
夫+妻の住民税:26万8千円
(夫の住民税計算式)
- 給与所得=460万円(年収)-146万円(給与所得控除)=314万円
- 所得控除額=社会保険料46万円+配偶者特別控除21万円+扶養控除33万円+基礎控除33万円=133万円
- 課税標準額=給与所得-所得控除額=314万円-133万円=181万円
- 所得割=181万円×10%=18.1万円
- 均等割=5千円
- 調整控除後の所得割=18.1万円-7.5千円=17.35万円
- 住民税=調整控除後の所得割+均等割=17.35万円+5千円=17.85万円
また、扶養控除できる家族がいる世帯は夫の住民税を減らせるので世帯全体としては住民税を少なくできます。
住民税がかかるとパートをやめた翌年も支払いがあるので注意
住民税は前年の年収で計算されます。つまり、住民税が多く出るほど働いていた時に仕事を辞めると、その年の住民税は翌年支払うため、予め支払う金額分は貯めておかないと経済的に圧迫されてしまいます。
パートの際は世帯全体での住民税を考えて働こう
社会保険は夫の扶養内でも、パート収入の金額によっては夫の住民税が増えてしまい世帯全体での住民税も増えます。そのため世帯での手取り収入をできるだけ増やすには、住民税も意識した働きかたをしましょう。