パートで働く際に知っておきたい130万円の壁。年収130万円を超えると妻自身が社会保険に加入するラインを表しています。
実は130万円の壁を超えないで働く(=夫の扶養でいる)ためには、単に年収が130万円未満だけではなく、その他にも様々な条件が必要です。
年収130万円に届かないから大丈夫、と思っていたらその他の条件で社会保険に加入になってしまい手取りが減ってしまった!ということも。
では130万円の壁を超えないで、しかもできるだけ多く働くためにはどうしたら良いか、条件と計算方法を説明します。
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そもそも130万円の壁って何?
年収130万円を超えると夫の社会保険(ここでは健康保険と厚生年金を指しています)の扶養から外れて自分で加入することから、130万円を超えるか超えないかで収入が変わるため「130万円の壁」と表しています。
130万円の壁を超える給料の計算方法は?
ここで気を付けたいのが、年収130万円というのは、「1年間に得る収入の見込み額」ということです。
そのため、130万円÷12か月=108,333円以上の月収を得ていればその時点で社会保険に加入となります。
そのため、扶養内で働きたい場合は、月収で気を付けないといけませんね。
月収以外にも、労働時間で決まる4分の3ルールもある
また、月収だけ気を付ければ良いわけでなく、労働時間にも注意が必要です。
1週間の所定労働時間および1か月の所定労働日数が、その職場で同じ業務をしている正社員の4分の3以上になると社会保険に加入となります。
具体的には、
正社員Aさんが
- 所定労働日数:月20日
- 所定労働時間:1日8時間×週5日=40時間
とすると
パートBさんは
- 20日×4分の3=15日/月
- 40時間×4分の3=30時間/週
以上で社会保険に加入となります。
130万円の壁ではなく106万円の壁になる人もいる
社会保険の扶養内を考える時、今までは130万円の壁でしたが、平成28年10月1日から106万円の壁(※詳しくは後述)ができました。
これにより一定の条件に当てはまる人は年収106万円で社会保険に加入となりました。
給料以外の交通費なども130万円の壁に含まれる
年収130万円(月収108,333円)の壁を考える時、交通費や住宅手当、賞与なども含まれます。
130万円の壁は超えないが、所得税・住民税の壁を超えてしまうことも
年収130万円以内で働いていて、社会保険が夫の扶養になっていても、そのほか「収入に関する壁」には、所得税と住民税もあります。
全て扶養内で働く場合は、いくらまで働けば良いのか所得税と住民税についても確認しましょう。
所得税は103万円、150万円の壁がある
年収103万円までなら妻自身に所得税はかかりません。103万円以上、130万円未満だと所得税がかかりますが、社会保険ほど高くはありません。
また、年収150万円までなら、夫に「配偶者控除」が適用できるので、夫の所得税を減らせます。
今までは配偶者控除も妻の年収が103万円までしか適用できませんでしたが、2018年(平成30年)1月から150万円までに拡大されました。
具体例で見てみると、
- 平成30年、
- 年収120万円(月収10万円)、
- 妻自身で扶養する人がいない場合(たとえば夫が子どもを扶養にしている)、
毎月の源泉所得税は750円となります。
この時の収入と年収103万円以内で働いたときを比べると、
年収103万円 | 年収120万円 |
---|---|
手取り収入103万円 |
手取り収入=120万円-9千円=約119万円 |
(所得税のみを考慮した場合での計算)
となり、所得税を支払っても年収103万円を超えた方が収入は増えることになります。ただし、ここに住民税も加わってきます。
所得税だけでなく、さらに住民税の壁もある
住民税には、おおよそ93万円、97万円、100万円の壁があります。住民税は住んでいる市町村によって、いくらの年収から支払いが発生するかが異なります。
住民税は所得割と均等割というものがかかるのですが、例えば、東京23区の場合は年収100万円までなら所得割も均等割もかかりません。
一方、茨城県水戸市の場合だと、所得割は年収100万円までかかりませんが、均等割は年収97万円までです。
そのため97万円を超えてしまうと均等割のみ支払わなければなりません。
では、年収が98万円、103万円、120万円の時それぞれの手取り収入を比較してみます。(妻のみで考えた場合、保険などの控除無し、扶養する人無し)
<東京23区>
①年収98万円の場合
- 所得税 0円
- 社会保険 0円
- 住民税 0円
=手取り収入98万円
②年収103万円の場合
- 所得税 0円
- 社会保険 0円
- 住民税 7,500円
=手取り収入=103万円-7.5千円=約102万2千円
③年収120万円の場合
- 所得税 750円×12か月=9千円
- 社会保険 0円
- 住民税 24,500円
=手取り収入=120万円-9千円-2.45万円=約116万6千円
<茨城県水戸市>
①年収98万円の場合
- 所得税 0円
- 社会保険 0円
- 住民税 6,000円
=手取り収入=98万円-6000円=約97万4千円
②年収103万円の場合
- 所得税 0円
- 社会保険 0円
- 住民税 8,500円
=手取り収入=103万円-6千円=約102万1千円
③年収120万円の場合
- 所得税 750円×12か月=9千円
- 社会保険 0円
- 住民税 25,500円
=手取り収入=120万円-9千円-2.55万円=約116万5千円
年収98万円 | 年収103万円 | 年収120万円 | |
---|---|---|---|
東京23区 | 手取り収入=98万円 | 手取り収入=約102万2千円 (103万円-7.5千円) |
手取り収入=約116万6千円 (120万円-9千円-2.45万円) |
茨城県水戸市 | 手取り収入=約97万4千円 (98万円-6000円) |
手取り収入=約102万1千円 (103万円-6千円) |
手取り収入=約116万5千円 (120万円-9千円-2.55万円) |
ただし、自治体によっては年収100万円未満でも住民税の均等割りが発生するところもあります。
また、年収103万円を超えると、夫の住民税が増えますので注意しましょう。
仕事を辞めてしまった場合、その翌年も住民税は支払いがありますので、住民税の壁を超えて働く時は翌年のことも考えて働くと良いでしょう。
130万円の壁以外に社会保険に加入する、106万円の壁とは
今まで社会保険に加入するかどうかは130万円の壁だけでしたが、平成28年10月1日より新たに「106万円の壁」も増えました。
パートでも一定の条件に当てはまる人は、年収106万円を超えると社会保険に加入しなければなりません。
106万円の壁が当てはまるのはこんな人
下記の①~③のいずれかが当てはまる人は、年収106万円を超えると社会保険に加入となります。
①週30時間以上働いている
必ず社会保険に加入となります
②従業員数501名以上の企業に勤めていて、次のA~D全てに当てはまる
A・学生ではない
B・週20時間以上働いている
C・月給8万8千円以上
D・1年以上働く見込みがある
③従業員数500名以下の企業だが、②のA~Dすべてに当てはまり、次のⅠまたはⅡに当てはまる
Ⅰ:国と地方公共団体の事業所に勤めている場合
または
Ⅱ:民間企業だが、雇う側と働く側で社会保険に加入する合意がある場合
(=合意が無ければ加入しない)
以上より、
- 従業員数500名以下の民間企業に勤めていて
- 月収108,333円未満
- 雇う側と特に合意が無い場合、
年収130万円までなら社会保険に加入しなくて良いことになります。
本当に130万円の壁は超えない方が良いの?
社会保険に加入すると、確かに手取り年収は減りますが、その分将来の備えになります。
社会保険に加入していると、
- 年金が増える
- 出産手当金(産前、産後休暇中にもらえる手当)がもらえる
(育休中の手当は雇用保険に加入している場合となります)
- 傷病手当金(病気やケガで休業するときの手当)がもらえる
- 障害厚生年金の上乗せ
などのメリットがあるので、万一の時や将来への備えになります。
手取り収入が減るけれど、それなりのメリットもありますので、世帯全体のバランスから働き方を考えると良いですね。