増える介護離職、介護と仕事を両立するにはどうすればいい?

今や日本は4人に1人が高齢者という、超高齢社会。家族の介護も誰もが直面する時代で、他人事ではありません。

そんな超高齢社会の日本で、深刻な問題となりつつあるのが介護離職です。認知症などの症状が深刻になって家を空けることができなくなったり、体力的な負担が大きいなどの理由から、仕事を辞めたり、転職してしまう人は年間10万人とも言われています。

しかし、介護離職は介護者の貧困に繋がるだけでなく、孤立を深めるおそれもあり、賢明な選択とは言えません。厚生労働省も「介護離職ゼロ」を目標にかかげ、支援に向けた法改正などを進めています。

今回は介護と仕事を両立するため、知っておきたい情報をご紹介したいと思います。


仕事を辞める前に、知っておきたい介護離職のデメリット

昼間は仕事に追われ、夜は介護に明け暮れる生活を送っていると、仕事を辞めて介護に専念した方が楽なのでは?という気持ちが芽生えるかもしれません。しかし、介護離職には多くのデメリットもあります。

老後貧困に陥るリスク
50代や60代前半で仕事を辞めてしまうと、再就職しても収入は前よりもぐっと下がり、年金をもらえるまではかなり時間があるため、老後貧困に陥るリスクが高まります。
精神的に孤立するリスク
仕事を辞めて、家で付きっ切りで介護をしていると、自然と人づきあいがなくなり、精神的に孤立するおそれがあります。特に相手が重度の認知症などの場合、賢明に介護をしても自分のことを認識してくれなかったり、被害妄想で暴言や暴力を振るわれるなどして、介護うつに陥る危険性も高くなります。
体力的な負担が増加する
仕事を辞めて介護に専念すると、それまでより介護に割く時間が長くなります。排泄や食事、入浴や買い物など、介護は体力勝負。仕事をしている間は他の人に任せていたことを、全部自分でやるようになると、体力的な負担も大きくなります。

上記のように、介護離職には様々なデメリットがあり、仕事を辞めたからといって、介護者の精神的・肉体的な負担が楽になるわけでもありません。

まずは離職しなくてすむよう、会社や行政に相談してみることが先決です。早まらず、冷静に判断するようにしましょう。

家族に介護が必要になったら、まずは介護保険の申請を

家族に介護が必要になった時、頼りになるのが介護保険制度です。介護保険を申請すると、要介護度に従い訪問介護や看護、デイサービスや福祉用具の貸与など、様々なサービスに保険が適用されます。

手続きも複雑ではありません。まずは要介護度を判断する材料の一つとして、意見書を書いてくれる主治医を決めましょう。

次に市町村にある介護保険担当の窓口に行き、介護保険申請書を提出して申請を行います。申請が終わると、原則1週間以内に訪問調査員が自宅や入院している病院をたずね、対象者の心身の状況について認定調査を行います。

その後、主治医の意見書なども参考に、専門の介護認定審査委員会により要介護度が決定され、通知が郵送されます。申請から通知が届くまでの期間は、約1ヶ月になります。

要介護度認定から、サービス利用開始までの流れ

要介護度の認定が終わると、介護度に応じてケアプラン(介護(介護予防)サービス計画書)を作成します。

要支援の場合は地域包括センターが介護予防サービス計画書を作成し、要介護の場合は介護支援専門員(ケアマネージャー)がいる、県知事の指定を受けたケアプラン作成業者が介護サービス計画書を作成します。

プランが作成できたら、実際に介護サービスの提供が始まります。

仕事との両立のため、介護休暇や介護休業制度を利用しよう!

厚生労働省は近年の介護離職の増加に従い、仕事と介護を無理なく両立できるよう、支援する制度を整えています。以下に企業で使える制度をまとめましたので、参考にしてください。

介護休業制度
要介護状態にある家族を介護するために、対象家族1人につき通算93日まで、休みを3回まで分けて取得できる制度です。対象者は配偶者、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹になります。
介護休暇制度
長期ではなく、介護のために単発で休暇を取得することができる制度。介護者の通院や入退院、買い物の付き添いなどの目的で休みを取ることが可能です。対象家族1人につき1年に5回、対象家族が複数の場合は年間10日まで休みを取ることができます。
勤務時間の短縮措置
要介護状態の家族を介護する従業員は、短時間勤務やフレックスタイム制度、始業や終業時刻の繰り上げや繰り下げができる時差出勤などの措置を受けることができます。
時間外労働・深夜勤務を制限する制度
業務に重大な支障がない限り、事業主は家族を介護する従業員に対し、1ケ月で24時間、1年で150時間を超える時間外労働をさせてはいけないとしています。同様の条件で、午後10時~午前5時の深夜労働についても禁止されています。
介護休業給付金
介護休業を取得した人が、休業中の給与の一部を受け取ることができる制度。原則として「休業開始時の日額×支給日数×67%」が支給額になります。対象者は介護休業の開始日から過去2年間に、賃金支払い日数が11日以上ある月が、12ヶ月以上ある人になります。

介護と仕事を両立するために、心がけたいこと

介護は育児と違って出口が見えず、身近な肉親が自分のことを忘れたり、ひどい言葉や暴力によって傷つけられることもあったりと、精神的にも肉体的にもとても過酷なものです。

介護する側が精神的・肉体的・経済的に追い詰められないために、仕事を続けることは大切なことです。

では、介護と仕事を両立するため、どのようなことを心がければよいのでしょうか。以下にまとめました。

職場やケアマネに、両立したい旨をしっかり伝える

上記のように、現在は仕事と介護を両立できるよう、行政からも職場からも様々なサポートが受けらるようになっています。

ケアプランを作成する際は、ケアマネージャーに仕事を続けたい旨を伝え、仕事で留守にする間、どのようなサービスが受けられるのか、しっかりと相談するようにしてください。

また、職場でも周囲に迷惑がかかるからと、仕事を頑張りすぎては、身体を壊してしまいます。使える制度は使い、時には周囲のフォローを受けながら、無理なく仕事を続けるようにしましょう。

とはいえ、いきなり長い休暇を取られたり、周囲にフォローしてもらうばかりで、自分は一切周りのフォローをしないというのでは、職場での人間関係が悪くなってしまいます。

長い休暇を取る際は早めに上司に相談し、また他の同僚が育児や病気等で休んだり早退しなければならない時、可能であればフォローするなど、お互い助け合う気持ちを大切にしましょう。

一人で介護を抱え込まず、時には息抜きも大切!

日本人は家族の問題は家族で解決しようとしがちで、家族の介護は自分でしなければと気負い過ぎる傾向があります。

しかし、仕事と介護に明け暮れる生活では、肉体的にも精神的にも不調をきたしてしまいます。時には仕事以外でも訪問ヘルパーやショートステイを利用して介護を別の人に任せ、息抜きをするようにしましょう。

また、同じように家族の介護をしている人と話をしたり、悩みを共有したりするのも、孤立を防ぐには効果的かもしれません。興味があれば、介護家族の集いや勉強会などに参加してみるのもいいでしょう。

頼れるものは頼り、自分の人生は犠牲にしない

家族が助けを必要としている時、その気持ちに応えたいと、あれもこれもやってあげたい気持ちになるのは分かります。

しかし、相手は大切な家族が介護に人生を捧げることを望んでいないかもしれませんし、介護が終わった後もその人の生活は続いてゆきます。介護で身体を壊したり、失業してしまうことは、当人にとっても家族にとっても、よい選択とは言えないのではないでしょうか。

超高齢社会の今、家族の介護は避けては通れない問題ですが、その分様々な制度も整ってきています。行政サービスや民間サービス、他の家族などの力も借りながら、自分一人で負担を抱えすぎないようにすることが大切です。

介護で自分の人生を犠牲にする必要はありません。ケアマネージャーや地域包括センターの相談員は、あらゆる家族のケースに対応しているので、とても頼りになります。私自身、遠方に住む一人暮らしの母親が要介護状態になった時、色々と相談に乗ってもらいました。

まずは自分でできることとできないことをしっかりと伝え、それに即したケアプランを作成してもらうようにしましょう。これからは家族だけでなく、社会で介護する時代です。一人で悩んだり抱え込んだりせず、周りの協力も得ながら介護を乗り切りましょう。
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