現在、国や法律、企業の手助け等により、妊娠している女性も働きやすい状態が作られ始めています。正社員だけでなく、パートさんもこれらの手助けを受けられる為、パートをしながら妊活をしている、という人も増えてきました。
妊婦さんや小さい子どもがいるお母さんに優しい世の中になりつつありますが、それでもまだまだ問題は消えていません。
パートで働いている人の中には、職場に妊娠した事を報告したら、パートを辞めるように言われた人もいるのです。
パートとして原いている時に、妊娠を理由に解雇を言い渡されたら、どうしたらいいのでしょうか。今回はその対処法を解説します。
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妊娠を理由にパートを解雇するのは法律違反。法律や制度を知っておこう
妊娠を理由にパートを解雇する事は基本的にできません。それを知っている企業が殆どですが、万が一の時の為に、法律や制度を知っておく必要はあります。まずはそこから学んでいきましょう。
妊娠を理由に解雇はできない
結論から言いますと、妊娠を理由に解雇するのは法律違反です。
これは
- 労働基準法
- 男女雇用機会均等法
の2つの法律により禁止されています。
労働基準法では、第19条『解雇制限』において、
第十九条 使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後三十日間並びに産前産後の女性が第六十五条の規定によつて休業する期間及びその後三十日間は、解雇してはならない。ただし、使用者が、第八十一条の規定によつて打切補償を支払う場合又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合においては、この限りでない。労働基準法
と定められています。
つまり、産休産後の女性が休業する期間やその後1カ月間の間は、解雇が禁止されているのです。
男女雇用機会均等法では、第9条 第3項で事業主、つまりパートを雇う企業等が以下の理由で女性を解雇する事を禁止しています。
- 女性が婚姻、妊娠、出産した場合には退職する旨をあらかじめ定めること。
- 婚姻を理由に女性労働者を解雇すること
- 厚生労働省で定められている自由(※)を理由に、女性労働者に対して不利益な取り扱いをすること
その為、
- 結婚や妊娠・出産をしたら解雇する、というような社則
- 結婚や妊娠・出産を理由に、解雇や不利益な扱い
をするという事はしてはいけないのです。
危険な作業がある場合
パートの仕事の中には、
- 重たい物を持つ・運ぶ
- 体に有害な物質を取り扱う
といった、妊婦さんがするには少し危険な作業をする仕事もあります。
こうした危険な仕事を妊婦さんに任せる事は、
- 労働基準法第63条 妊婦などに係る危険有害業務の就業制限
- 労働基準法第65条 軽易業務転換の権利
で禁止されています。
妊婦さんにとって危険な作業が主な仕事の場合は、企業側が妊婦さんの体に負担の少ない仕事を割り当てなくてはならないのです。
その為、危険な作業が主な仕事で、それは妊婦さんには任せられないから、という理由で解雇する事も、法律違反となります。
現実的には
この様に、妊婦さんや小さい子供がいるお母さんを一方的に解雇する事は法律で固く禁止されています。しかし、現実には妊娠や育児を理由にパートを辞めていく人もいます。
妊娠は体に大きな負担がかかっている状態です。人によっては、企業がどんなに手を尽くしてくれても、働くのが難しい状態になってしまう人もいます。
この様な場合に、企業と相談し、その上で辞める場合は問題がないとされています。それでも、法律違反となる事を避ける為、法的に保護されている期間は働く様な形になる事が多いようです。
法律はあくまでも、企業が妊婦さんを一方的に解雇できないように守る為にあるものです。
- 自分の体調
- 仕事の状態
等、実際の問題から考え、相談した上で退職を選ぶ事になる可能性は考えておくようにしておきましょう。
妊娠を理由にパートを解雇された時の対処法も覚えておこう
では相談や自分の判断で退職を選ぶような場合ではなく、一方的に解雇されそうな時はどうしたらいいのでしょうか。対処法を解説しますので、参考にして下さい。
まずは上司等に相談を
妊婦のパートさんが解雇されそうになる原因の一つに、上司や企業の知識不足があります。妊娠や出産を理由に解雇してはいけない、という法律を知らない事から、解雇を言い渡してしまう、という訳です。
解雇を言い渡されたら、まずはこの法律を知っているか確認しましょう。法律違反になる事を知れば、解雇を撤回してもらえる可能性があります。
この時感情的に対応してしまうと、トラブルに発展してしまう場合があります。相談する時はできるだけ冷静に対応しましょう。ネット等で資料を用意した上で話をするのも効果的です。
解雇されそうになったら、解雇理由証明書をもらおう
妊娠を理由に解雇する事が法律違反であると伝えても、それを強行しようとする場合もあります。そのような状態になったら、解雇理由証明書を発行してもらいましょう。
解雇理由証明書とは、その名の通り解雇となった理由を具体的に記載した証明書の事です。本来なら失業保険をもらう時に、解雇されたことを証明する為に使う書類ですが、妊娠を理由に解雇を言い渡し場合、それの証明としても使えます。
この書類の理由が「妊娠」となっていた場合、不当な解雇である事の証明となり、解雇を撤廃できるのです。
企業側は労働者が解雇理由証明書の発行を希望した場合、必ず発行しなくてはならないと労働基準法によって定められています。
応じない場合は労働基準監督署の
- 是正勧告
- 罰金
を受けなくてはいけません。
妊娠を理由に解雇され、法律違反である事を伝えても解雇が変わらない場合は、解雇理由証明書の発行をしてもらいましょう。
労働基準監督署や、弁護士への相談も有効
これまでの対処をすれば、解雇の撤廃をしてくれる企業が大半です。しかし、企業の中には正しい対処をしても対応してくれない、ブラック企業も存在しています。
- 不当な解雇である事を伝えたが、取り合ってもらえない
- 解雇理由証明書を発行してもらえない
- 不当な解雇である事を通達されたはずなのに、解雇が撤廃されない
といった場合は、専門機関や専門家に相談しましょう。
- 労働基準監督署
- ハローワーク
等、労働に関連した問題を取り扱う施設では、妊娠や出産、育児に関連した労働の相談も受け付けてくれています。自分の住む地域を管轄している施設を探し、相談してみましょう。
この他、労働問題に詳しい弁護士さんに相談や手続きをお願いするのも有効です。
労働問題は一人だけで対応するのは難しい問題です。自分だけで抱え込まず、ほかの人の力も借りるようにしましょう。
妊娠してもパートは可能。解雇されそうになったら正しい対処をしよう
妊娠してもパートで働く事は可能です。企業側から解雇を言い渡されても、毅然とした態度で対処するようにしましょう。自分だけでは難しい時は、ほかの人の手も借りるようにして下さい。