少子高齢化が進む日本ですが近年は医療が発達し健康寿命が伸びたこともあり、継続的に働く意欲を持つシニア世代は少なくありません。
正社員の定年制を見ても以前は60歳での定年退職が一般的でしたが、現在は法律の改正もあり、希望する労働者には再雇用や定年年齢の引き上げなどの制度が設けられています。
パート社員として働くシニア世代も増加し実際の現場でも戦力として活躍していますが、パートの場合も正社員同様に定年制が適用されるのでしょうか?今回は、パートの定年制について詳しく見ていきましょう。
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そもそも定年制とは?一定年齢で自動的に雇用関係が終了する制度
パートの定年制について詳しく掘り下げて見る前に、まずは正社員に設けられている定年制のポイントをおさらいしていきましょう。
- 定年制は一定年齢で自動的に雇用関係が終了する制度
- 定年制は正規雇用の正社員や公務員に設けられており、一定年齢に達すると企業や組織との雇用関係が自動的に終了する制度です。
- 法律の改正により定年年齢が変化
- 1994年の法改正で60歳未満の定年制が禁止されたことから60歳が一般的な定年年齢でしたが、現在は高年齢者雇用安定法に定められている通り、希望する労働者全員に対して65歳まで継続雇用することが義務化されています。
- 定年退職日については企業が決定する
- 定年退職日については法律に基づいて企業が独自に決定できるため、定年年齢に達した誕生日や定年年齢の最終日などさまざまですし、退職金についての規定も異なります。
また、定年退職日の決定方法や退職金の規定などについては企業が決定することになるので、労働者一人一人が定年退職後の生活を見越して計画的に働き方を考える必要があるでしょう。
有期契約に定年の適用はないが、無期契約なら適用されることも
期間を限定して雇用契約を結ぶことになるパート社員の場合は、定年制が適用されないケースがほとんどです。
しかし、労働契約法の改正により「無期転換ルール」が施行されたため、有期雇用契約から無期雇用契約に転換したパート社員などに対して定年制が適用されるケースが増えてきています。
パート社員に設けられた無期雇用という働き方の特徴と、無期雇用パートと定年制の関わりについてポイントを押さえながらチェックしていきましょう。
- 無期転換ルールとは
- 無期転換ルールとは、有期労働契約を結ぶ労働者は更新により契約期間が5年を超えた時、期間に定めのない無期労働契約に転換できるという法律です。
- 無期雇用パートにも定年が定められる
- 無期雇用に転換した場合は雇用の期限を定めることは認められていませんが、定年を定めることは認められています。
- 正社員同様に60歳を下回ることはできない
- 無期雇用パートの定年も正社員と同様に60歳を下回ることはできないので60歳以上の定年が定められ、希望する場合は65歳まで継続雇用が義務付けられています。
法改正に伴いシニア人材が働きやすい環境を作る会社も増えている
近年は少子高齢化が進み慢性的な人材不足が深刻化していますが、高年齢者雇用安定法の改正で働く意欲と能力を持ったシニア人材に対して働きやすい環境を提供したり、シニア人材を積極的に採用する会社も増えてきています。
- シニア人材が働きやすくなるための取り組みの一例
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- 75歳までは健康状態や勤務時間の希望を聞きながら継続雇用する
- 60歳以上のシニア人材をパート社員として積極採用する
また、今後も少子高齢化が進むことが予想されるので、社会的に見てもこのような取り組みは労働者人口を増やし日本経済を支えることにもつながるでしょう。
パートが定年を理由に退職を迫られた場合…まずは雇用契約を確認
今見てきた通りパート社員には定年制が適用されないケースの方が多くなりますが、万が一職場から定年を理由に退職を迫られることがあった場合はそれに従わなくてはならないのでしょうか?
職場から迫られたからと言ってこのまま退職に応じるのではなく、まずは雇用契約をきちんと確認して自ら状況を把握することが大切です。
- 雇用契約のチェックポイント
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- 雇用期間は無期雇用?有期雇用?→有期雇用の場合は定年制の適用なし
- 無期雇用の場合は就業規則の定年についての記載があるか?→記載がない場合は話し合う必要有り
無期転換ルールの申し込み権を持つ労働者が出始めてから間もないこともあり、無期雇用のパートに対する定年制の法律がきちんと定められていないため、職場と定年制についての話し合いが必要になった場合は専門家へ相談することをおすすめします。
また、雇用保険の失業給付を受ける際にも退職理由は受給資格を決める重要なポイントとなるので、退職を迫る理由を詳しく確認することも大切です。
定年は就業規則に記載すべき重要事項!労働者もきちん把握しよう
就業規則はそれぞれの企業、それぞれの雇用形態で内容の違いがありますし、パート社員に定められる規定は企業ごとに大きく異なるため、パート社員の場合も入社時や更新時には契約内容についてきちんと確認することが大切です。
また、労働者に関わる法律も日々変化する社会情勢により改正されるので、正しい知識を身につけていく必要があります。
長く働き続けることを目指すなら、まだ遠い将来に思える定年のことまで視野に入れて、自分の求める働き方を実現できる企業を見極める力も備えていきましょう。