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男性の育休取得をはばむ、「パタハラ」っていったい何?

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「パタハラ」という言葉をご存知でしょうか?「パタニティ(父性)」と「ハラスメント(嫌がらせ)」を組みあわせた言葉で、「父親としての役目を果たそうとする人に対する嫌がらせ」を意味します。

狭義的には、育休取得や時短勤務を申請した男性が職場で嫌がらせを受けることを指します。近年、イクメンプロジェクトとして、政府が男性の育休取得を推進していますが、現場ではまだまだ理解が進んでいないことも多いのです。

今回はパタハラについての様々なデータや具体的な事例、パタハラを受けないための対策などについてご紹介したいと思います。

育休取得率は微増しているものの、パタハラが新たな障壁に!?

日本では昔から、育児休暇制度はあっても、男性が取得することはありませんでした。平成8年度での男性の育児休暇取得率はなんと0.12%。1000人に1人という割合の低さです。
しかし、2010年より政府が始動した「イクメンプロジェクト」などの影響もあり、じょじょに男性の育児休暇取得率は増加。平成29年度には5.14%と、過去最高を記録しています。

その一方、育児休暇を取得しようとする男性社員に対し、上司が嫌がらせをしたり、取得を阻んだりする事例も多く見られるようになりました。

厚生労働省のイクメンプロジェクトの推進メンバー、渥美由喜氏はこれを「パタニティハラスメント」であると提唱し、問題視しています。

パタニティハラスメントの具体的な事例とは?

では実際に、男性が育休を取得しようとすると、上司や同僚からどのような嫌がらせを受けるのでしょうか。以下に具体的な事例を挙げていきましょう。

  • 育休取得を申請すると、上司に「育児は母親の仕事。男性が育児休暇なんて恥ずかしい」などと嫌味を言われた。
  • 育児休暇取得を認めてもらえなかった。
  • 大切なプロジェクトや昇進・昇給の対象から外された。
  • 時短勤務の場合、時間外(早朝や深夜)に出社して仕事をするよう強要された。
  • 同僚が仕事をフォローすることに非協力的だった。

こうした事例を見てみると、世の中は共働き家庭が大半にも関わらず、男性上司たちの頭の中では「家事育児は女性がするもの」という意識がまだまだ強いのだなあ、とため息が出てしまいますね。

男性社員の1割程度が、パタハラを経験している

パタハラの現状については、2014年に日本労働組合総連合会が行ったアンケートが参考になります。
ここではまず子供がいる525名に「職場でパタハラをされた経験があるか」と聞いたところ、11.6%が「ある」と回答。

また、子供がいない人も含めた全回答者1000人に「周囲にパタハラにあった人がいるか」と聞いたところ、10.8%が「いる」と答えました。

具体的なパタハラの内容としては、以下のような回答が得られました。

  • 子育てのための制度利用を認めてもらえなかった5.5%
  • 子育てのために制度利用を申請したら上司に“育児は母親の役割”“育休をとればキャリアに傷がつく”などと言われた3.8%
  • 子育てのための制度利用をしたら、嫌がらせをされた1.9%

こうして見ると、男性社員の1割程度が実際にパタハラにあったり、パタハラを目撃していることが分かります。育休を申請した人だけを対象にアンケートを行えば、もっと割合が高くなるかもしれませんね。

パタハラの主な原因は、昔ながらの固定観念と職場環境

父親が母親とともに熱心に育児に取り組むのは、現代の常識ではごく当然のこと。なのになぜ、パタハラが起こってしまうのでしょうか。その原因は、上司世代と育児世代である20~30代の、育児に対する考え方のギャップにありそうです。
今、職場で管理職に就いている40~50代の親世代は、男性が外で働き、女性は専業主婦として家を守る家庭が多かった世代。「モーレツ社員」などという言葉が流行り、仕事に身を捧げることこそ男の美学という価値観もありました。
そのため、育休を取ろうとする男性は、「仕事への熱意が足りない」と映ってしまうのかもしれません。
また、男性の育休が周囲からよく思われないのは、今の日本の職場環境が、男性の育休取得を想定した人員配置をしていないことにも原因があるでしょう。

女性社員の採用では、ある程度妊娠出産を想定して、その人が欠けても一時的にフォローができる人員配備をしているところもあるでしょう。しかし、男性の場合は働き続けることを前提に考えられており、育休を取得すると、周囲の負担が重くなってしまうため、渋られることもあるのかもしれません。

女性ですら産休や育休でマタハラを受けることがある現状では、男性の育休取得は言わずもがな。慢性的に人員不足で、育休どころか有休すら取れないブラック企業も多いので、働き方改革の推進は急務と言えるでしょう。

パタハラが認められ、被害者が勝訴した事例も存在する

職場でパタハラを受けてしまったら、泣き寝入りするしかしょうがないと、諦めている人もいるかもしれません。しかし、2014年にパタハラで職場を訴え、勝訴した岩倉病院事件の裁判例も存在します。

事の発端は2010年、京都市内の岩倉病院で看護師として働いていた男性が、3ヶ月の育児休暇を取得したことを理由に、2011年度の職能給の昇給が認められず、かつ昇格試験を受ける機会すら与えられなかったというもの。
男性はこれらの措置が育児介護休業法10条に違反するとし、京都労働局に援助の申し立てを行い、労働局は病院に対し是正勧告を行いました。
しかし、病院側が従わなかったため、男性は昇級・昇格した場合との差額分の損害賠償と慰謝料を求めて京都地裁に提訴。1審判決では、昇格試験を受けさせなかったことについては違法性が認められ、慰謝料15万円の支払いが命じられましたが、昇給を認めなかったことについては、違法性がないと判断されました。
男性はこれを不服として大阪高裁に提訴。高裁判決では昇給についても違法であると判断され、男性の訴えが全面的に認められることになりました。

パタハラは違法である、と司法が認めたことは、今後男性の育児休暇取得が推進されていく上でも、重要なターニングポイントになるでしょう。

パタハラに遭わないためには、どんな対策が必要?

育児休暇を取るならば、できれば周りとも摩擦なく、円満に話を進めたいもの。パタハラに遭わないようにするには、どんな対策があるのでしょうか。以下にまとめました。

国の制度や社則などで、自分が利用できるものを調べておく

育児休業制度をはじめ、短時間勤務や時間外労働の制限など、子供を持つ会社員が利用できる制度はさまざまなものがあり、それらは会社の規則にも記載があります。
まずは申請する前に、それらに目を通し、期間や時間など利用できる制度の制限や条件、必要な書類は何かなど、くわしく知っておくようにしましょう。

その理由はもちろん、制度を利用したいが上司に調べてくださいでは無責任すぎるというのもありますが、万が一上司が理不尽な理由で育休取得を拒否した場合、規則にあると反論できるというのもあります。

できるだけ早いうちから、時期や期間について上司と相談を

長く育児休暇を取る場合、上司はその期間に仕事の埋め合わせをする人員を配備したり、現状の人員で仕事量を調整するなどしなければなりません。もし新たに人を雇うのなら、ましてや相応の準備期間が必要です。

あまり直前に育児休暇が欲しいと申請するのは無神経というもの。奥さんが安定期に入ったぐらいから、直属の上司にはいつ、どのぐらいの期間育児休暇を取得したいのか、あらかじめ相談しておくとよいでしょう。

実際に育児休暇を取った人に、話を聞いてみる

もし社内に実際に育児休暇を取得した男性社員がいるのなら、どういう風に上司に切り出したのか、休む前にどのような準備が必要だったのかなど、あらかじめ話を聞いておくとよいかもしれません。

同僚とフォローしあえる関係性を築く

自分が休んだり、早く帰ったりする時は周囲にフォローしてもらっているのに、他の人が休暇を取ったり、体調を崩したりして休んだ時に、仕事のフォローに非協力的だと、同僚からも反感を買ってしまいます。

周りの協力があってこそという感謝の気持ちを忘れず、同僚ともお互いフォローし合える関係性を築いておけば、必要な時に気持ちよく協力が得られるはずです。

男性の育休取得は当然の権利!積極的に利用して前例を作ろう

いかがでしたか?今はまだ男性の育児休業取得は珍しいですが、育児休業法で性別の規定があるわけではありませんし、共働きが大半の現代、男性の育児休業取得は労働者にとって当然の権利だと言えます。

今の上司が男性の育休取得に眉をひそめるのは、自身が子育て世代のころ、周囲に取得した例がほとんどなかったから。ということは、パタハラにひるんで取得をあきらめていては、今後も男性の育休取得推進は進まないことになります。

自身が前例を作るつもりで、周囲への配慮はしつつ、積極的に育児休暇を取得していくことが、子育てしやすい未来に繋がるのではないでしょうか。

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