離婚したら年金の半分が貰えるわけじゃない!分割制度と注意点

厚生労働省が発表している人口動態統計によれば、平成29年に結婚したカップルは、60 万 7000 組。ですが、同じ年に離婚したカップルは、21 万 2000 組。

この数字だけでは、単純に3組に1組が離婚するとは言えませんが、昔より離婚する人が多くなったことは事実です。

今の時代、結婚して新しい暮らしをスタートする人もいれば、離婚して心機一転、新たな暮らしをスタートする人も多いですよね。

ただ、離婚でやっぱり気になるのは、お金のこと。気持ちよく別れるためにも、お金のことで後々まで揉めたくありません。そのためには、知っておいた方がいいことも。

離婚と年金の関係って知っていますか?
「離婚したら年金は半分になる!」「離婚届けを提出すれば、年金も自動的に分割される」と思っていませんか?実は違うんです。

今回は、離婚に関わる年金分割制度と、その注意点についてご紹介したいと思います。


日本の年金制度の基本

年金制度って複雑で難しいイメージがありますよね。国民年金に厚生年金、最近では個人型確定拠出年金のiDeCo(イデコ)もよく耳にします。まずは日本の年金制度について、簡単にお話します。

年金は大きく3つに分かれます。「年金制度は3階建て」って聞いたことありませんか?1階部分だけの人もいれば、1階、2階、3階すべて対象となり、たくさんの年金を受け取る人も。働き方や個人の選択により、年金の受給額は大きく異なります。

〈1階部分〉・・・国民年金

これは、日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満のすべての人が加入するもの。自営業者もサラリーマンも専業主婦も20歳以上の学生さんも、みんな加入していますが、それぞれの働き方や境遇等によって、3つに分類されています。

  • 第1号被保険者:自営業者など
  • 第2号被保険者:会社員・公務員などの厚生年金加入者
  • 第3号被保険者:第2号被保険者の被扶養配偶者(いわゆるサラリーマンの妻で、専業主婦やパート勤務で夫の扶養に入っている人)

20歳から60歳までの40年間すべての期間で保険料を納めた場合、65歳から満額の779,300円(平成30年4月分からの年金額)が支給されます。保険料納付済期間や保険料免除期間等により給付額は変動するため、満額を受け取る人は少ないようです。

ちなみに、原則65歳から受給できますが、繰上げ支給(受給額減額)や、繰下げ支給(受給額増額)を請求することも可能です。

〈2階部分〉・・・厚生年金

これは、会社員や公務員などが加入する年金制度で、1階部分の国民年金に上乗せして給付されるもの。厚生年金保険に加入している人は、先ほどお話した「国民年金の第2号被保険者」に分類され、国民年金の給付である「基礎年金」に加えて、「厚生年金」も受けることとなります。

給付額は在職中の給与水準や加入期間などによって決まります。加入期間1か月の人もいれば、30年40年の人もいますので、受給額に大きな差が生まれます。

〈3階部分〉・・・企業年金等

さらに上乗せして給付されるのが、3階部分です。
会社の福利厚生の一環として支給される「企業年金」や、老後のために自ら加入し運用して老後に備える「個人型確定拠出年金(iDeCo)」などがあります。

個人型確定拠出年金(iDeCo)は、2階部分である「厚生年金」がもらえない自営業者や専業主婦の方でも加入できます。

分割制度対象の年金は厚生年金だけ!離婚後2年以内に請求!

ご紹介したとおり、年金にはいろいろな種類があります。ですが、離婚の際、すべての年金が平等に半分ずつになると思ったら大間違い!

実は、年金分割制度の対象となる年金は限られていて、対象となるのは「厚生年金」だけなんです。国民年金も、企業年金も対象ではありません。夫が個人事業主で、婚姻期間中ずっと国民年金に加入していたという場合などは、分割の対象となる年金はないんです。

そもそも、年金分割制度って何?って思いますよね。

年金分割制度には2種類あり、平成19年4月からスタートしたのが「合意分割」。そして、翌年平成20年4月からスタートしたのが「3号分割」です。この2つの制度にはどのような違いがあるのでしょうか。

1)合意分割

合意分割とは、その名の通り、基本的には「夫婦双方の合意」が必要な分割制度です。婚姻期間中の厚生年金記録を分割します。ただし、合意がまとまらない場合は、夫婦どちらか一方が裁判所に求めることにより、裁判所が按分割合を決めて分割します。

また「合意分割の請求」が行われた場合、婚姻期間中に「3号分割」の対象となる期間が含まれるときは、「合意分割」と同時に「3号分割」の請求があったとみなされます。

〈合意分割の対象となる人の条件〉

  1. 婚姻期間中の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)があること。
  2. 当事者双方の合意または裁判手続により按分割合を定めたこと。
  3. 請求期限(原則、離婚等をした日の翌日から起算して2年以内)を経過していないこと。※共済組合等の組合員である期間を含みます。

2)3号分割

3号分割とは、その名のとおり、国民年金の第3号被保険者であった人が対象となる分割制度です。平成20年4月1日以後の婚姻期間中の厚生年金記録を2分の1ずつ分割できます。

この制度のポイントは2つ。
一つは、3号被保険者であった人が請求をすれば、夫婦双方の合意がなくとも、2分の1ずつ分割される、ということ。

そして、もう一つは、3号被保険者として配偶者の扶養に入っていた時期のある人でも、平成20年年3月31日以前の年金記録は「3号分割」でなく、「合意分割」の対象になる、ということです。

〈3号分割の対象となる人の条件〉

  1. 婚姻期間中に平成20年4月1日以後の国民年金の第3号被保険者期間中の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)があること。
  2. 請求期限(原則、離婚等をした日の翌日から起算して2年以内)を経過していないこと。

〈こんな時、3号分割はできません!〉

  • 上記の条件を満たしていない時
  • 分割される方が障害厚生年金の受給権者で、この分割請求の対象となる期間を年金額の基礎としている場合

分割制度の対象でない年金は、財産分与の話し合い

分割制度の対象は「厚生年金だけ」となると、「平等じゃない!」と感じる人もいるのではないでしょうか。

そんな時、年金制度対象外の年金は、財産分与で話し合われ、夫婦間の公平を図ることもあるようです。

婚姻期間中に築いた財産は、名義に関係なく、夫婦の「共有財産」であると考えられます。年金も共有財産とみなされる場合がありますので、離婚する時は、年金分割制度を利用して分割請求するだけでなく、財産分与の話し合いも大切です。

個々のケースによって、財産分与の詳細は異なりますので、詳しく知りたい方は、法律の専門家である弁護士に相談しましょう。

◆法律相談センター:弁護士会が運営する相談窓口。15分程度ですが、弁護士が質問に答えてくれる電話無料相談もあるようです。

「合意分割」の手続きの流れ

「3号分割」は、離婚後、請求期限内に年金手帳や戸籍謄本等の必要書類を用意して、年金事務所で請求手続きをすればOKですが、「合意分割」は、思い立ってすぐにできるものではありません。

夫婦間ですぐに合意できれば良いですが、合意できず裁判所で按分割合を決めるとなると、請求期限の2年なんてあっという間です。

請求期限(原則、離婚等をした日の翌日から起算して2年以内)を守るために、手続きの流れを知っておくとスムーズです。

1)「年金分割のための情報提供の請求」をする

まずは、「情報提供の請求」からです。最初から「合意分割の請求」を行えるわけではありません。必要書類を用意して、お近くの年金事務所で「年金分割のための情報提供の請求」を行いましょう。これは、離婚後ではなく、離婚前でも請求可能です。

必要書類にも細かな規定がありますので、必ず年金事務所で詳細を確認して、書類の準備をしましょう。

【情報提供の請求に必要な書類】

  • 年金分割のための情報提供請求書
  • 請求者本人の国民年金手帳、年金手帳または基礎年金番号通知書
  • 婚姻期間等を明らかにすることができる市町村長の証明書または戸籍の謄本若しくは抄本
  • 事実婚関係にある期間に係る情報提供を請求する場合は、世帯全員の住民票の写し等の事実婚関係を明らかにすることができる書類

※詳細は年金事務所にお問い合わせください。

2)「年金分割のための情報通知書」が交付される

必要書類を揃えて、年金事務所で「年金分割のための情報提供の請求」をすると、およそ3〜4週間で「年金分割のための情報通知書」が郵送されてきます。

この通知書には、年金分割の対象となる期間や範囲に関わる情報が記載されており、この情報をもとに当事者間で按分割合を話し合うことになります。

3)年金分割について当事者間で話し合い

「合意分割」をするためには、下記の2つの内容について話し合い、当事者双方の合意が必要になります。

  1. 「年金分割請求をするか否か」について
  2. 「按分割合はどうするか」について

4)合意できれば合意書類を用意。できなければ裁判所へ。

当事者間で合意できた場合は、その合意内容を証明する書類を用意します。
一方、当事者間で合意できなかった場合は、家庭裁判所へ申立てをし、按分割合を決めることになります。

5)「年金分割の請求」をする

いよいよ「年金分割の請求」です。離婚後、請求期限内(原則、離婚等をした日の翌日から起算して2年以内)に必要書類を用意し、年金事務所で請求手続きを行います。

たとえ裁判で按分割合を定めたとしても、請求期限内に年金事務所で請求手続きを行わないと、厚生年金記録は変更されず、分割されませんので、期限を過ぎないよう十分に気を付けてください。

【必要書類】

  • 標準報酬改定請求書
  • (4)で用意した「合意内容を証明できる書類」
  • 夫婦の年金手帳
  • 夫婦の戸籍謄本

※詳細は、必ず年金事務所で確認しましょう。

6)「標準報酬改定通知書」が交付される

この通知書が届いたら、「合意分割」の手続きは、完了です。

自分の受給資格と分割請求期限に気を付けよう!

今回は、離婚の年金分割制度についてお話しました。最後に大切なことをお伝えします。

いくら年金分割の手続きをしても、年金を受け取る本人が、国民年金の加入期間を満たし受給資格を得ていない場合、年金をもらうことはできませんので、十分に注意しましょう。

そして、年金分割には2種類ありましたが、どちらも「離婚等をした日の翌日から起算して2年以内」という請求期限がありましたね。

「結婚より離婚の方がエネルギーを使う」とよく言われますが、離婚する際は、引っ越しや様々な手続きで物理的や金銭的な大変さに加え、精神的なダメージも大きいものです。

新生活について色々と考えることが多すぎて、年金分割なんて頭から抜けてしまいがち。

「ちょっと落ち着いてから。」と思っていて請求期限を過ぎてしまうケースもありますので、今後の生活のためにも、忘れずに請求するようにしましょう。

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