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裁量労働制とはどのような働き方?労働者のメリットとデメリット

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裁量労働制とはどのような働き方なのか、ご存知ですか?
労働時間は労働者の裁量に委ねられているといいますが、残業代はどうなるのか、正当なお給料はちゃんともらえるのか?疑問がたくさんあります。
法律がどうなっているかを知っておかないと、転職を考えた時に困ってしまうかもしれません。
自由な働き方であるといわれる一方で、長時間労働を助長しているという意見も。
労働者側から見た時にどのようなメリット、デメリットがあるのかということをきちんと理解しておいた方が良さそうです。

働く時間が労働者の裁量に任せられている、それが裁量労働制

裁量労働制とはその名の通り、働く時間の管理を労働者個人に任せること。出勤する時間も自由だし、退社もいつでもいいのです。
何時間働くかも自分で決めます。

労働時間は「みなし時間」

出退勤が自由といっても、何時間働いたのかという目安がないとお給料が決められません。
「成果物」だけで判断できないこともありますよね。ですから1日当たりの労働時間の目安を決めます。それを「みなし時間」といいます。

みなし時間を1日8時間とした場合、1時間早く帰っても、2時間残業しても、1日の労働時間は8時間ということで計算がされるのです。

残業代が出るかどうかはケースバイケース

出勤する時間などは自由なので、基本的には残業代は出なくなります。
みなし時間が8時間となっている時、10時間働いても2時間分の残業代はつきません。

ただし、もしも法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えている場合は、当然ですが、会社には割増賃金を支払う義務があります。

また、法定休日に出勤したり、深夜勤務をした場合も、もちろん割増賃金を支払う義務が生じます。

フレックスタイム制との違い

出退勤が自由というと、フレックスタイム制と同じじゃないの?と思われるかもしれませんが、違うんです。
フレックスタイム制とは出退勤の時間が自由であるというだけで、労働時間を計算する時は「実働時間」が元になります。
何時に出勤しようと10時間働けば10時間と計算されます。
しかし裁量労働制は、みなし時間が8時間であれば、10時間働いても8時間と計算される、その点が違うのです。

事業場外みなし労働時間制との違い

みなし労働時間と名のつく制度がもう一つあります。それが「事業場外みなし労働時間制」です。
これは、例えば外回りをする営業職など、会社にずっといない仕事の場合は正確な勤務時間を把握することが難しいですね。
そんな時にこの制度が適用されることがあります。
朝からずっとお客さんのところを回っていた日も、午後からだけ回った日も、会社で決められている所定の労働時間分働いたとみなすのです。

ちなみにそれは「事業場外」での働きに限るので、外回りから20時頃会社に帰ってきて21時まで残業したという場合は、1時間分の残業手当が支払われなくてはなりません。

このみなし時間は、業務する上で通常必要とする時間を元に決めますから、8時間の場合もあれば10時間であることも。
法定労働時間を超えた分は当然残業代を請求できます。この点は裁量労働制と同じです。

裁量労働制には種類がある。希望する職種かどうかを確認

裁量労働制はどんな職種でも取り入れられるというわけではありません。自由に出退勤できるからそうしたいなと思っても、普通の事務職では出来ないのです。

労使協定を結ぶ必要がある

雇用主から一方的に押し付けられないために、会社側と労働者側で話し合って導入することになっています。
労働組合があれば組合の代表が、ない場合は労働者の過半数を代表する人が会社と話し合い、協定を結びます。
この協定では、

  • 出退勤時間を決めないこと
  • みなし時間をどのくらいにするか
  • 労働者の健康管理について

などを決めて、労働基準監督署に届け出る必要があります。
また、労使協定は社員に周知されなければいけないので、

  • 掲示
  • 書面の交付
  • 備え付け

などの方法によっていつでも確認が出来る状態になっていることが義務づけられています。

適用される業種が限られている

裁量労働制を導入できる職種は以下のようなものです。
これらの職種は「専門業務型裁量労働制」といわれています。

  • 研究開発、研究業務
  • 情報処理システムの分析、設計等
  • 新聞、出版、放送などの取材、編集
  • デザイナー
  • プロデューサー、ディレクター
  • コピーライター
  • システムコンサルタント
  • インテリアコーディネーター
  • ゲームソフトの開発
  • 証券アナリスト
  • 金融商品の開発
  • 大学の研究業務
  • 公認会計士
  • 弁護士
  • 建築士
  • 不動産鑑定士
  • 弁理士
  • 税理士
  • 中小企業診断士
詳しくはこちらも参考にしてください。
「労働基準法のあらまし(東京労働局)」https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/library/201541153120.pdf

これらの19の職種で裁量労働制が認められるのは言うまでもなく、本来の業務を行っている場合に限ります。
例えば、コピーライターとして採用したのに営業の仕事などをさせて「裁量労働制だから」といって残業代を支払わないというようなやり方は違法です。
もう一つ、「企画業務型裁量労働制」と呼ばれるものがあります。
こちらは職種ではなくて事業の運営や企画立案に関わる業務を行う場合に取り入れられます。
業務の性質上、どうやって仕事を進めていくかを個人にゆだねた方が効率的にできる、という理由から導入されたものです。

こちらは専門型とは違い、労働者、会社側、それぞれ半数からなる労使委員会を設置し、その5分の4以上の多数決によってそれぞれの事項を議決するなど、非常に厳格な導入条件があります。

裁量労働制はいいの、悪いの?メリットとデメリット

裁量労働制は、労働時間ではなく「成果物」に評価基準を置いて、労働者が効率よく仕事をするための制度だとされています。
会社にとっては人件費の予測が立てやすかったり、無駄な労務管理費も発生しないというメリットがあります。
では労働者にとって本当にメリットがあるのか、それともデメリットの方が大きいのでしょうか。
現状では、よくよく会社側と話し合って取り決めをしないと、いいように使われて、かえって労働者の負担が増えるなど問題点も出てきています。

好きな時間に仕事ができる

出退勤が自由なので、自分のペースで仕事がしやすくなります。
退社時間が決まっていませんから、早く出勤して効率よく仕事を終わらせ、早く帰るということも自由です。

能力やスキルがある人にとっては、会社の勤務時間に縛られることなく、自由に仕事が出来る制度といえます。

家庭のある人などは、出退勤の時間が調整できるというのはとても有り難いかもしれないですね。

成果主義なので自分のやり方で仕事ができる

裁量労働制は結果を出すことが大事。何時間働いたかではなくて、成果を上げてなんぼです。
ですから、ある意味どんな仕事のやり方をしようとも、成果が上げられるのであれば会社としてはOK。
能力があって、会社に縛られない働き方をしたい人には向いている制度かも知れません。

みなし時間と求められる成果が釣り合っていない

ずっとやってきた仕事であれば、この仕事ならこのくらいの業務量だなということがわかるでしょう。
しかし転職するとなると新しい仕事に就くわけですから、本当にそのみなし時間で成果が上げられるのかがわからないと思います。

釣り合っているということがわからないと、決められた時間で何とか成果を上げようと頑張るもののそれができず、労働時間だけが増えていくという事態になりかねません。

ここはこの制度の一番のデメリットかもしれません。

労働時間の概念がなく働きすぎてしまう

いつ仕事をしてもいいといわれると、かえって時間の概念がなくなってしまい、だらだらと残業を続けた結果、これまでよりも労働時間が増えてしまうという人もいます。
特にゲーム開発やデザイナーなどのクリエイティブな仕事は時間の概念なく仕事をしてしまう職場が多いようです。
労働政策研究・研修機構の調査結果によると、裁量労働制の人は、

  • 深夜に勤務
  • 土日に勤務
  • 自宅で仕事
  • 休日がない

と答えている人の割合が多いことがわかります。自由に働ける分、普通の働き方よりも働きすぎてしまう傾向が見られます。

(参考:「裁量労働制等の労働時間制度に関する調査結果」https://www.jil.go.jp/institute/research/2014/documents/0125.pdf)

残業代が支払われない

休日出勤や深夜勤務以外は、基本的には残業代が支払われません。

みなし時間は労使協定で決めますが、実際の労働時間がその時間と大きく乖離していた場合、苦情を申し立てるなどの方策をとらない限り、ただ働きの時間だけが増えていくことになります。

成果を出すために家に仕事を持ち帰るなど、結果的にサービス残業となってしまうケースが多く見られます。

転職しようと思っている会社が「裁量労働制」となっていたら

転職しようと思った会社が「裁量労働制」となっていたら、メリットとデメリットをよく考えて、本当にその会社でやりたいことが出来るのかどうかということを検討しなくてはいけません。

労使協定があるかを確認

先ほども説明したように、裁量労働制は会社が勝手に導入することは出来ません。労働者側と話し合い、労使協定を結び、それを労働基準監督署に提出する必要があります。

なおかつ労使協定というのは労働者の見えるところに置くなどして周知することが労働基準法によって義務づけられています。

また、労使協定があっても労働者側の代表者が適正な方法で選ばれていなければ、その協定自体が無効になるのです。
ブラック企業では言うことを聞く適当な社員を指名して労使協定を作るというケースもあるそうです。
労使協定がどのようになっているか、人事や総務の人などに事前に確認した方がいいでしょう。

どのような成果が求められているのかを確認

裁量労働制を採用しているということは、一定の仕事の成果が目に見える形で要求されているということです。
ですから、具体的な仕事の内容を把握しておかないと、自分がその成果を出せるのかどうかが判断できません。
みなし時間とのバランスを考える上でも、求められている仕事内容は細かく確認する必要があります。

残業代が支払われているか

みなし時間の範囲内であれば基本的に残業代は出ませんが、

  • 法定労働時間を超えている分
  • 深夜残業代
  • 法定休日の出勤

この分は残業代として支払わなくてはいけません。実際の勤務状況や、それに伴う残業代はきちんと支払われているのかということは確認した方がいいでしょう。

よくわからないで済ませてはいけない法律のこと

裁量労働制は適正な業務内容とみなし時間であれば、自由に出退勤ができて、短い労働時間でも相応のお給料がもらえるという、労働者にとってはとても魅力的な制度です。
裁量労働制自体が悪いというものではなく、実際にその制度のおかげで働きやすくなったという人もいるでしょう。
しかし制度の細かい点まで熟知しておかないと、転職して痛い目に合うかもしれません。
企業が正しい運用をしているのかどうかをしっかりと確認し、また、裁量労働制が自分の理想の働き方なのか、ということもよく考えてみてください。

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