雇用保険では失業してから再就職するまでの期間、1日でも早く再就職するためのサポートが受けられます。
そのサポートとしてハローワークでの職業相談や紹介を受けることだけでなく失業保険が受給できますが、給付を受けるためには一定の条件を満たしているしていることときちんと申請する必要があります。
また、退職時の条件によって失業保険の期間や支給される金額が異なってくるので、失業保険を受給するために揃えなくてはならない「必要書類」や「支給条件の決定に関わる資料集め」についてご紹介していきます。
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自己都合退職でも給付される!申請前に給付条件をチェック
失業保険は雇用保険の制度の一部を指し、被保険者が失業してから再就職するまでの期間も最低限の生活を維持し、新しい仕事を1日でも早く見つけるための給付です。
毎月の給料から雇用保険料を支払っていた労働者には失業保険を受け取る権利がありますが、受給するためには一定の条件を満たす必要があるのでまずはその条件を見ていきましょう。
- いつでも就職できる能力がある
- いつでも就職できる能力があるということは、病気やけが、妊娠出産、学業に専念することなどを理由に退職した人は含まれず、すぐにでも就職できる状態であることを指します。
- ハローワークで積極的に求職活動をしている
- ハローワークにて休職の申し込みを済ませ、積極的に求職活動をしているということも給付の条件になります。
- 離職以前2年間に被保険者期間が通算12ヶ月以上ある
- 離職以前2年間に被保険者であった期間が12ヶ月以上あることも条件となりますが、これは離職日から遡って1ヶ月ごとに見た時、1ヶ月間に11日以上働いた月が12ヶ月あることが対象になります。
ただし、被保険者期間の計算については退職理由によって受給の条件が変わってきます。
リストラなどの会社都合退職の場合や、家族の介護のために自己都合退職をした場合などの正当な理由として見なされれば離職以前1年間に被保険者期間が6ヶ月以上ある労働者が対象となります。
会社都合の場合、提出書類は増えるが給付額も増える可能性が
失業保険給付の条件を見てきた通り「自己都合退職」と「会社都合退職」どちらの場合も給付対象になりますが、退職理由によって申請に必要な書類が変わってきますし給付までの待機期間や給付期間の長さに違いが出てきます。
自己都合と会社都合の判断基準
退職にはさまざまな理由がありますが、失業保険給付にあたり自己都合退職と会社都合退職を判断するこのような観点から受給資格者の区分が決定されます。
- 自己都合退職とは
- 自己都合退職とは、労働者からの申し出により労働契約解除がなされた場合を指し、受給資格の区分は「一般受給資格者」になります。
- 会社都合退職とは
- 会社都合退職は会社の倒産や解雇、退職勧告などで退職した場合を指しますが、パワハラやセクハラ、給料が大幅に減額されたことなどが退職原因だと認められた場合も会社都合退職に該当し「特定受給資格者」になります。
また、家族の介護のため自己都合退職をしたケースなど、正当な理由だと判断されれば「特定理由離職者」と認定されるので、自らの申し出により退職する場合も会社都合退職として申請可能であるか見直してみましょう。
一般受給資格者と特定受給資格者の違いとは
一般受給資格者と特定受給資格者では待機期間や給付期間が異なるので、初めの手続きの際に正しく申請しなくてはなりません。具体的な違いを理解しておきましょう。
- 待機期間の違い
- ハローワークの窓口にて求職の申し込みをしたのち、失業保険受給のための手続きをしその後7日間の待機期間を経て給付が受けられますが、一般受給資格者は更に3ヶ月の給付制限期間を待たなくてはなりません。
- 給付期間の違い
- 一般受給資格者は被保険者期間から給付期間が決まりますが、特定受給資格者は年齢と被保険者期間から給付期間が決定されます。
また、30歳の被保険者の場合で見てみると、一般受給資格者なら被保険者期間10年まで90日の支給になりますが、特定受給資格者として認められた場合は被保険者期間が1年以上あれば120日給付されるのでその差は決して小さくないでしょう。
このように一般受給資格者と特定受給資格者では待機期間や給付期間が異なるので、会社都合退職と認められる資料を積極的に集めることは大切です。
申請に必要な基本の書類と会社都合退職の場合に必要な資料とは
失業保険給付を受けるためには住んでいる自治体を管轄するハローワークへ直接申請をする必要があります。
申請に必要な基本の書類と、会社都合退職の場合にその事実を証明するために必要な資料をご紹介していきます。
申請に必要な基本の書類
まずは、失業保険を申請するすべての人が用意すべき書類を見ていきましょう。働いていた会社から受け取る書類もあるので、退職時に受け取りの手続きを済ませておくことが大切です。
- 雇用保険被保険者離職票
- 雇用保険被保険者離職票は労働者が退職した後に会社がハローワークに手続きすることで発行されるので、退職前に受け取り方法を確認しておきましょう。
- 個人番号確認書類
- 個人番号確認書類として、マイナンバーカードもしくは通知カード、個人番号の記載がある住民票を用意しましょう。
- 身元(実在)確認書類
- 身元(実在)確認書類として運転免許証、運転経歴証明書、マイナンバーカード、官公署が発行した写真付きの身分証明書や資格証明書などが必要になります。
- 写真
- 最近撮影した正面上半身の写真で、縦3.0cm×横2.5cmのサイズのものが2枚必要になります。
- 印鑑
- 印鑑はインク浸透印ではなく認印を用意します。
- 本人名義の普通預金通帳もしくはキャッシュカード
- 失業保険を受け取るための口座を確認するために本人名義の普通預金通帳もしくはキャッシュカードを持参します。
会社都合退職の場合に必要な資料
会社都合退職の場合は事実確認ができる書類を事前に準備し、申請の際に一緒に提出する必要があります。
退職理由によって必要な書類が異なるので、一例を見ながらチェックしていきましょう。
- 雇止めにあった
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- 3年以上契約更新を繰り返し、本人に契約更新の意思があるにもかかわらず更新がなされなかった場合など。
- 必要書類…労働契約書、雇用通知書、就業規則、契約更新の通知書、タイムカード
- 仕事内容が大幅に変わった
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- 入社した時から仕事内容が大きく変わったことが原因で退職した場合。
- 必要書類…採用時の労働契約書、事例、賃金台帳
- 給料が大幅に減額された
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- 出来高制や降格などの理由なしに給料が大幅に減額された場合。
- 必要書類…労働契約書、賃金規定、賃金低下の通知書、就業規則
- 勤務地が遠方になった
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- 勤務地が変更されて通勤時間が往復4時間以上になったことにより、勤務地変更から3ヶ月以内に退職した場合。
- 必要書類…事業所移転通知、通勤経路の時刻表
- 長時間残業があった
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- 退職するまでの6ヶ月の間に1ヶ月の残業時間が100時間を超えていたり、45時間以上の残業が3ヶ月続いている場合など。
- 必要書類…残業時間を証明するタイムカードや自分のメモ、賃金台帳、給与明細
- 給料の未払いや遅延があった
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- 2ヶ月以上に渡って給料の3分の1以上が未払いだった場合など。
- 必要書類…法令違反があったことを証明できる資料
- 業務内容が法令違反だった
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- 業務内容が法令違反だと気づき、3ヶ月以内に退職した場合。
- 必要書類…法令違反があったことを証明できる資料
- パワハラやセクハラがあった
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- パワハラやセクハラを受け、社内や公的窓口へ相談しても解決せずに退職した場合。
- 必要書類…労働契約書、被害を受けたことを証明する資料
失業認定日に提出する失業認定申告書も事実に基づいた申告を
失業保険を受けるための手続きを終えてから再就職までの期間、失業認定日に失業認定申告書を提出し、再就職活動をしているにもかかわらず失業中だと認められると給付されます。
この時提出する失業認定申告書も事実に基づいた内容を申告しなくてはなりません。
- このような申告は不正受給に該当する
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- 再就職活動の実績がないのに虚偽の活動実績を申告する
- アルバイトやパートを含む就職や就労、もしくは自営業を始めたことを申告しない
- 内職や手伝いによる収入を隠して申告する
アルバイトやパートなどで働きながら再就職活動をする場合は、1日4時間以上働いた場合は不支給になるので働き方をきちんと考えましょう。
失業保険の仕組みを理解した上で、正しく申請し受給しよう
失業保険は失業から再就職するまでの期間、生活や就職活動のサポートとして支給が受けられる心強い制度です。
ただし、条件を満たす失業者に自動的に給付されるのではなく、自ら申請しなくては受給できません。
また、退職理由も支給条件に関わってくるので失業保険の仕組みをきちんと理解し、資料を集めて正しい申請の元に給付を受けましょう。