パートを始めるにあたり、手取り収入ができるだけ減らない働き方はどうしたら良いか、と考えたことはありませんか?
せっかく収入をUPさせるために働くのですから、家計の状況に合わせて一番オトクな働き方をしたいですよね。
給料の手取りが大きく減ってしまう一つとして社会保険の支払いがあります。
正社員だけかと思われがちですが、実はパートでも社会保険(ここでは厚生年金保険と健康保険を差します)に加入しなければならない条件があります。
いわゆる【106万円の壁】です。では、この壁を超えない働き方の場合本当にトクになるのでしょうか。
また、超える場合はどうしたらトクになるのでしょうか。状況別に説明します。
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【106万円の壁】とはそもそも何を表しているのか
1年間に106万円以上の年収を得て、一定の条件に当てはまる場合、パートでも社会保険に加入しなければならなくなりました。
社会保険に加入すれば、
- 厚生年金
- 健康保険料
が天引きされますから手取り収入が減ります。
ただし、すべての人が当てはまるわけではありません。加入する条件についてはこの後の「106万円の壁、パートが社会保険に加入する条件」で説明しています。
106万円の壁と130万円の壁はどう違うのか
実は106万円の壁も130万円の壁も、どちらも社会保険に加入する年収のラインを表しています。
以前は年収130万円までなら加入する必要がありませんでした。社会保険に加入すると手取り収入が大きく減るため、めいっぱい働いても年収130万円は超えない様にしていたパートの方も多かったと思います。
ところが平成28年10月1日から、一定の条件に当てはまる人は年収130万円ではなく、106万円で社会保険加入となりました。
106万円の壁、パートが社会保険に加入する条件とは
以下の①~③のいずれかに当てはまる場合、パートでも社会保険に加入します。
①:週30時間以上働く場合
必ず社会保険加入になります。
②:労働時間は週30時間未満だが従業員数501名以上の企業に勤めている場合
下記の4つ全てに当てはまると社会保険加入になります。
- 学生でないこと
- 週20時間以上働く場合
- 月給が8万8千円以上の場合
- 1年以上働くことが見込まれること
③:従業員数500人以下の企業に勤めていて、それ以外の条件が②と同じ場合
次のいずれかの場合は社会保険に加入になります。
- 民間企業の場合、雇う側と働く側の合意があれば社会保険に加入できる
- 国、地方公共団体の事業所に勤めている場合は必ず加入とする
以上が社会保険に加入する条件です。
お互いの合意が無い限り、
- 従業員数500人以下の民間企業に勤める人
- 今まで通り130万円までの収入
なら自分が社会保険に加入することはありません(平成30年7月時点)。
ただし今後の法改正によって変わることも考えられますので注意が必要です。
106万円の壁を超えた場合のデメリットとは?
では、実際に106万円を超えてしまうとどのくらい手取り収入が変わってくるのでしょうか?
まずは所得税や住民税は考えずに、社会保険のみのケースで説明します。なお収入以外の社会保険加入条件は全て満たす前提で例をあげています。
また、社会保険がいくらかかるかは職場の場所により異なります。
更に40歳以上では支払う金額が多くなる(介護保険料がかかるため)ので
- 40歳未満のケース
- 40歳以上のケース
をあげています。
例として、
- 職場の場所はいずれの年齢でも東京都
- 健康保険料は多くの人が加入する協会けんぽ
を元にしています。
社会保険が給料から天引きされた時の手取り収入の違い
それぞれの年齢層で、年収が108万円のケースと、125万円のケースで概算した例を表にしています。
年収108万円(月9万円) | 年収125万円(月10.4万円) | |
---|---|---|
40歳未満 | 社会保険 約1.2万円/月 手取り約7.8万円/月 手取り年収93万円年収106万円より-13万円 |
社会保険 約1.4万円/月 手取り約9万円/月 手取り年収108万円年収106万円より+2万円 |
40歳以上 | 社会保険 約1.3万円/月 手取り約7.7万円/月 手取り年収92万円年収106万円より-14万円 |
社会保険 約1.5万円/月 手取り約8.9万円/月 手取り年収106.8万円年収106万円より+0.8万円 |
ただし実際にはこのほか所得税や住民税、雇用保険に適用する場合は雇用保険料も関わってくるためもっと複雑になります。こちらについては後ほど説明します。
106万円の壁を超えた場合のメリットとは?
では、パートが社会保険に加入することがデメリットしか無いかというと、一概にそうとは言えません。
将来の年金が増える
妻自身が社会保険に加入すると、全ての人に共通している基礎年金に加えて、厚生年金が上乗せされます。
夫の扶養に入っている場合は保険料の支払いが無いですが、厚生年金の上乗せ分も無いため、将来もらえる年金額も少なくなります。
出産や病気、ケガで休業する時も手当がもらえるため、より安心
出産に関してですが、社会保険に加入していなくても出産育児一時金(平成30年 42万円)は国民健康保険からも支給されています。
ただし産前産後休暇中にもらえる「出産手当金」は社会保険に加入していなければもらえません。
社会保険に加入することで、産休中の休業に対する手当までもらえるのでより安心な生活ができます。
また、病気やケガで休業する場合でも一定の条件に当てはまれば、「傷病手当金」がもらえるので安心です。こちらも社会保険に加入していなければもらえません。
障害厚生年金が上乗せされるので万一の時の備えになる
社会保険に加入すると、障害基礎年金に加えて障害厚生年金が上乗せされます。さらに、障害基礎年金のみではもらえない障害等級3級でも支給されますので、万一の時の備えが手厚くなります。
以上より、現時点での手取り収入で考えれば、106万円の壁を超えてしまうと損をしてしまう場合もありますが、将来の生活や万一の時の備えを考えると社会保険に加入することはメリットでもあります。
社会保険以外に所得税、住民税にも壁がある
106万円の壁以外にも、実は所得税、住民税にも壁があります。
所得税は、いわゆる103万円、150万円の壁、住民税は93万円、97万円、100万円の壁です。
所得税103万円と150万円の壁
所得税の103万円の壁とは、この金額までの年収なら妻自身が所得税を支払わなくても良いというものです。
一方150万円の壁は妻の年収が150万円までなら、夫の所得からも配偶者控除ができるため夫の所得税を減らせるので、世帯全体でみるとおトクになるというものです。
住民税93万円、97万円、100万円の壁
住民税は自治体によって差があるので、住んでいる場所によって変わります。
- 93万円
- 97万円
- 100万円
の年収までなら妻自身の住民税を支払わなくて良い、というものです。
支払わなくてもよい年収額がいくらまでかは、自分の住んでいる市町村のホームページで確認できます。
以上より、106万円の壁を超えないように働く場合でも、年収によっては所得税と住民税がかかってきますので注意が必要です。
もし150万円の壁を超えてしまったら?
では、妻が年収150万円を超えた場合はどうでしょうか。
実は年収201万円までなら配偶者特別控除というものが夫の所得から差し引けます。配偶者控除よりも差し引ける金額は減りますが、ゼロでは無いので多く働きたい人に嬉しい制度となっています。
ただし、配偶者控除や配偶者特別控除は夫の年収が1,220万円以下の場合に当てはまる制度です。
夫の年収が1,220万円超の場合、控除額はゼロとなります。
夫の年収が1,120万円超~1,220万円までの世帯では、控除額がゼロではありませんが年収によって控除できる金額が段階的に減っていきます。
【106万円の壁】を意識した働き方は世帯の収入バランスで判断しよう
106万円の壁を超えて働く方が良いのか、超えないで働く方が良いのかは自分のライフスタイルや世帯全体で見たときの収入のバランスを考えたうえで、決めると良いでしょう。
今の収入なのか、将来の生活スタイルなのか、それとも万一の保障なのか、自分が優先したい状況によって何がメリットになるかが変わるからです。
これらを事前に知っておくことで、より安心して働けますね。