15人に1人は、一生に一度はかかると言われているうつ病。自分には関係ないと思っている人もいるかもしれませんが、いつ、誰がかかってもおかしくない病気です。もちろん、自分も、いつうつ病を発症してもおかしくないのです。
そうはいっても、風邪などと違い、うつ病についてよく知らないという人も多いでしょう。会社の仲間や部下、家族などがうつ病と診断された場合、どう接していいか分からないものです。
特に職場では個人的な接し方のほか、社内における雰囲気づくり、協力体制なども検討していく必要があります。職場における、うつ病と診断された人との接し方について見ていきましょう。
Contents
脳の機能が低下しているのがうつ病。病気について理解を深める
うつ病の人と接するうえで、うつ病について正しく理解することが必要です。うつ病とはどのような病気なのか、知っておきましょう。
心と脳の関係とは?うつ病が引き起こされるメカニズム
私たちはさまざまな感情を持って日常生活を送っています。楽しみや悲しみのほか、食べたい、仕事を一生懸命やりたい、などといった感情や意欲を持って時間を過ごしています。
そういった感情や意欲は、脳が機能していることで起こります。脳内にある神経細胞による情報伝達がスムーズに働くことで、喜怒哀楽ややる気などの意欲がコントロールされるのです。
100種類もある神経伝達物質。うつ病治療で重視されているのが3種類
脳の機能が正常に働くためには、神経伝達物質がバランスよく機能していることが重要です。神経伝達物質は100種類以上もあると言われていますが、その中で特にうつ病に関係しているとされているのが、次の3種類です。
- セロトニン
- 安心感を与えたり、気持ちをリラックスさせたりする神経伝達物質で、人の感情に大きく影響することが分かっています。
- ノルアドレナリン
- 恐怖や驚きなどを感じさせ、興奮させる神経伝達物質です。交感神経を活発にする働きがあります。
- ドーパミン
- うれしい、楽しい、などの快楽を感じさせる神経伝達物質です。
これらの神経伝達物質の量が減ったり、機能が低下したりすると、うつ病の症状が出るのではないか?と考えられています。
私たちには自然治癒力という機能があります。そのため、仕事でミスをして気持ちが落ち落ち込んでも、時間が経過すれば気持ちは元に戻ります。失恋をして悲しくても、時間とともに気持ちも明るくなっていきますよね。
脳の神経伝達物質の働きが低下する原因
脳の神経伝達物質の働きが低下し、うつ病になる原因には、さまざまな要因があると言われています。
- 大切な人との別れ
- 財産を失うなどのショック
- 大病をするなどのストレス
- 人間関係のトラブル
- 家族間におけるトラブル
- 職場での昇格や降格などの変化
- 結婚・妊娠
などの環境の変化が影響していることがあります。また、性格も要因の一つとなることも。
- 完璧主義
- 几帳面
- 常に周りに気を遣う
- 義務感や責任感が強い
などといった性格は、脳も体も疲弊しやすく、つらい状態が続くと、脳の機能低下につながると言われています。
早期発見、早期対策が重要。うつ病のサインを見逃さない
うつ病は対策を講じないかぎり症状が進行してしまうことが多いです。悪化すると、最悪の場合自殺などといった最悪の事態を招きかねません。うつ病も早期発見が必要なのです。
スタッフの仕事ぶりや行動をチェック。職場におけるうつ病の兆候
部下や同僚、上司など今まで一緒に仕事をしてきた仲間に、次のような変化があれば要注意です。
- ミスを連発するなど、仕事の質が落ちる
- 集中力がなく仕事へのやる気が見られない
- 仕事中、ふらりとどこかにいなくなることがある
- 遅刻や欠勤が増える
- 仕事のスピードが落ちる
- 会話がなくなる
- ランチは一人で行くなど一緒に行動しなくなる
- 神経質になり、感情をあらわにすることがある
このような変化に気づいたら、本人との話し合いの場を設けた方がいいでしょう。
うつ病の可能性のあるスタッフと話すときの注意
特に上司であれば、仕事上のミスや納期遅れなどについて注意したくなるのも仕方ありません。しかし、いきなりミスを指摘すると、症状が悪化する恐れがあります。相手ができるだけリラックスして話しができる環境を作ることをおすすめします。
うつ病だから仕事ができないわけではない!職場でできるサポート
確かにうつ病になると仕事でのミスも増えてしまうかもしれません。しかし、仕事ができないわけではありません。そうはいっても過重労働は症状を進行させてしまう要因です。職場での接し方や職場でできるサポートについて紹介しましょう。
職場内で話し合い、心と体の負担を軽くする
職場ではみんなで話し合い、支援する態勢を作るのが望ましいことです。うつ病のスタッフが健康な心と体を取り戻せるよう、柔軟な態勢を作りましょう。
- 勤務時間をフレックス制にする
- こまめな休憩時間を設ける
- 負担の軽い作業など仕事内容の変更
- 残業の免除
- ストレスのかかる仕事を減らす
などといった内容や、ミスを減らすためチェック機能を増やすといったサポートもしていくといいでしょう。また、仕事を依頼する際には、何をどのようにいつまでにやるのか、など指示を明確に出すようにしましょう。
励ましすぎも重荷に。話を聴く姿勢が大切
職場では“支援をしている”という雰囲気は大切ですが、恩着せがましくなったり、何かあれば「がんばって」と言ってしまったりするのはマイナスに働きます。
「がんばって」と言われれば、「やはり自分はがんばっていない、がんばれないダメな人間なんだ」と感じてしまいます。また「そんなことじゃダメ!しっかりしなきゃ」などの叱咤激励も、ストレスに感じてしまうでしょう。
「退職したい」など重要な決断は先送りする
「退職したい」または「離婚したい」などと相談されることがあるかもしれません。うつ状態のときは、必要以上にネガティブになっていて、自分への自信も失くしています。そのせいで、仕事を続けていけば周りに迷惑がかかる、夫婦であれば相手の重荷になりたくない、などと考えてしまうのです。
一人で対応しようとせず、みんなで対応する
仲の良い同僚がうつ病かもしれない、と感じたとき、何とかしてあげたいと思うものです。しかし、うつ病は精神的な励ましだけで立ち直れるものではありません。医学的な治療が必要な場合も少なくないのです。
誤った接し方をしないためにもうつ病に対する理解を深める
「もし自分の一言で病気を悪化させてしまったら」と考えると、うつ病の相手とどう接していいか分からなくなってしまいます。必要以上の励ましは負担になりますが、あからさまに避けたりすれば、相手は傷ついてしまうでしょう。
まずはうつ病について理解を深めましょう。うつ病は他人事ではありません。特にストレス社会で働く人にとって、うつ病は身近なものなのです。自分のためにも、うつ病に関する正しい知識をつけることで、適切な接し方が見えてくるのではないでしょうか。